PPAモデルとは?第三者所有モデルのメリット・デメリット
世界各国において環境問題が重視されている現在、一般家庭のみならず企業にも「再生可能エネルギーの導入」「脱炭素化社会実現」に向けた取り組みが求められています。再生可能エネルギーの導入にはあらゆる方法が存在しますが、中でもPPAというビジネスモデルは米国を中心に普及が進んでいることが特徴です。
そこで今回は、PPAモデルの概要や利用するメリット・デメリットとデメリットの対策方法を詳しく解説します。環境問題や太陽光発電システムに興味を持っている企業経営者・事業者や、PPAモデルがどのような仕組みなのか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
1.PPAモデルとは?
PPAモデルとは、事業者が所有する施設の屋根や敷地に、太陽光発電設備の所有・管理を行う発電事業者が主に太陽光発電システムを設置して、発電した電気を施設や敷地を所有する事業者が購入し、発電事業者に電気の使用料を支払うビジネスモデルのことです。一般的に、発電した電気を購入する事業者のことは「需要家」、太陽光発電システムを設置する発電事業者のことは「PPA事業者」と呼ばれます。PPA事業者は太陽光発電システムの設置を無償で行っており、運用・保守も行います。
PPAモデルは「第三者所有モデル」とも呼ばれており、米国を中心に普及が進んでいることも特徴です。需要家側・PPA事業者側・電力使用者側の各方面にメリットが存在し、日本国内でも企業の再生可能エネルギー導入促進として徐々に導入が進んでいます。そもそもPPAモデルの普及が進む背景には、気候変動対策への取り組みがさらに求められるようになったことのほか、電気料金の上昇・売電価格の下落も挙げられます。余剰電気の売却におけるメリットが少なくなり始めた近年、PPAモデルはより注目されていると言えるでしょう。
1-1.第三者所有型と自家消費型の違い
太陽光発電システムの設置は、これまで「自家消費型」が一般的でした。自家消費型太陽光発電システムとは、太陽光発電システムと太陽光発電システムで発電した電気をすべて自社所有するビジネスモデルのことです。主に電気料金の削減にメリットがありますが、その分導入コストが高く発生する点がデメリットとも言えます。
PPAモデルと呼ばれる第三者所有型と自家消費型の違いを、需要家目線で比較した表が以下のとおりです。
■第三者所有型(PPAモデル)
所有権 | 太陽光発電システムの所有権はPPA事業者にある |
---|---|
初期コスト | 太陽光発電システムを購入しないため初期コストが発生しない |
運用・保守 | メンテナンスやメンテナンスに伴う費用はPPA事業者が負担 |
電気料金 | PPA事業者から使用した電気を買い取る |
事業期間 | 10~20年など、長期間に設定されていることが多い |
■自家消費型
所有権 | 太陽光発電システムの所有権は需要家にある |
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初期コスト | 太陽光発電システムの購入に多額の初期コストが発生する |
運用・保守 | メンテナンスの実施費用や各種税金・保険料はすべて自社負担 |
電気料金 | 太陽光発電システムで発電した電気を無償で使用でき、かつ余剰電力は電力会社に売却も可能 |
事業期間 | 10年程度で投資分を回収できることが多い |
2.PPAモデルを利用するメリット
自家消費型のデメリットと言える部分をすべてカバーできるPPAモデルには、CO2削減やCSR(企業の社会的責任)対策以外にもさまざまなメリットがあります。
PPAモデルの主なメリットは、下記の3つです。
- 太陽光発電システムの初期費用・維持費用が必要ない
- 再エネ賦課金がかからず電気代を抑えられる
- オフバランス化できる可能性がある
ここからは、それぞれのメリットについて詳しく解説するため、「メリットを十分に理解したうえで導入を検討したい」という方はぜひ参考にしてください。
2-1.太陽光発電システムの初期費用・維持費用が必要ない
PPAモデルにおける太陽光発電システムの設置は、PPA事業者による無償設置となっています。そもそも太陽光発電システムはPPA事業者の所有物となるため、運用・保守もPPA事業者が行います。設備投資額だけでなく、定期的なメンテナンスの実施に伴う費用も需要家が支払う必要はありません。
太陽光発電システムを自社で購入・設置するとなれば、初期費用・維持費用ともに決して少なくない費用が発生します。しかしPPAモデルであれば、初期費用・維持費用が必要なくなるため、大幅なコスト削減にもつながるでしょう。
2-2.再エネ賦課金がかからず電気代を抑えられる
PPAモデルは、再エネ賦課金をかけずに電気代を抑えられる点もメリットです。再エネ賦課金とは、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の略称で、FIT法で定められている「電力の買取費用として国民が負担しなければならない費用」を指します。再エネ賦課金は、毎月電気料金に上乗せされる形でまかなうこととなっており、年々上昇傾向にあります。
太陽光発電システムで発電した電気を使用する場合、この再エネ賦課金はかかりません。電気料金も基本的に定額となることが多く、再エネ賦課金・電気代の負担を抑えることができる点は大きなメリットと言えるでしょう。
2-3.オフバランス化できる可能性がある
PPAモデルを導入すれば、オフバランス化できる可能性も高まります。オフバランスとは、資産および取引において、賃借対照表に計上されないことを意味します。
PPAモデルは資産計上が不要となるケースもあり、その場合は総資産利益率(ROA)に何らかの影響を及ぼすことがありません。経理・税務手続きや処理にかかる工数も削減することが可能です。
3.PPAモデル導入時のデメリットと対策
PPAモデルにはさまざまな魅力があるものの、デメリットもあるため導入時には注意する必要があります。PPAモデルのデメリットは、下記の通りです。
- 10年以上の長期契約中は交換・処分ができない
- 契約期間満了後のメンテナンスは自己負担になる
- 自家消費型よりも経済効果は小さい
ここからは、各デメリットの詳細を、対策法とあわせて解説します。
3-1.10年以上の長期契約中は交換・処分ができない
PPAモデルでは、PPA事業者が設置した太陽光発電システムの電力を一定期間購入するという契約を交わします。この契約は、10年以上に及ぶ長期契約となるケースが多々あることが特徴です。
前述の通り、太陽光発電システムの所有権は設置している施設や敷地の所有者である需要家ではなく、太陽光発電システムの設置・管理を行うPPA事業者となります。そのため、長期契約期間中は太陽光発電システムの交換や処分ができません。
契約期間中に太陽光発電システムの交換や処分をしたいと思うことがないよう、契約の際は費用や導入条件をきちんと確認しておくことが重要です。また数年後に施設のリニューアルを検討している場合は、リニューアル後に導入するようにしましょう。
3-2.契約期間満了後のメンテナンスは自己負担になる
PPAモデルの導入において、需要家・PPA事業者とが長期の契約を交わすと説明しました。契約期間中の太陽光発電システムのメンテナンスは、所有者であるPPA事業者が費用を負担して行うことが基本です。
しかし、契約期間が満了したあと太陽光発電システムが需要家に譲渡される契約を行った場合、契約期間満了後のメンテナンスはすべて需要家自身が自己負担で行わなければなりません。
とは言え太陽光発電システムの修理頻度は、さほど高くありません。そのため、なるべく万全な状態で譲渡してもらうためにも、契約期間中に行われるメンテナンスはどのようなものなのかをあらかじめ確認しておきましょう。
3-3.自家消費型よりも経済効果は小さい
PPAモデルで導入した太陽光発電システムから発電される電気を使用した場合、発電量・電気使用量に応じてPPA事業者に電気の利用料金を支払わなければなりません。一方で、自家消費型の太陽光発電システムから発電した電気の利用にコストは発生しないことが特徴です。
PPAモデルは自家消費型とは異なり、初期投資額が必要ない点は経済面において大きな魅力となりますが、長期的に見ると自家消費型よりも経済効果が小さくなる場合があることを理解したうえで実施しましょう。
また、PPA事業者によっても電気料金は異なるため、導入の際は各PPA事業者の提示する費用・契約条件を総合的に判断したうえで選ぶことをおすすめします。
まとめ
米国で人気のあったPPAモデルは、近年日本国内においても普及が進んでいます。PPAモデルとは、需要家の所有施設の屋根や敷地にPPA事業者が太陽光発電を無償設置し、発電した電気や環境価値を需要家が購入するというビジネスモデルです。需要家は契約期間中、PPA事業者に電気料金を支払う必要があるものの、初期費用・維持費用がかからない点はメリットと言えるでしょう。
PPAモデルは、メリットだけでなくデメリットも当然存在します。しかしデメリットは事前にきちんと把握し、適切に対応することである程度抑えることが可能です。ここまでの内容を参考に、中長期的にCO2の削減を目指す企業様は、ぜひ段階的なCO2削減が可能な電気の供給・提案・サポートを行う「ゼロFITナビ」にご相談ください。
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